去る2025年9月、京都南座で「流白浪燦星」を見た。「流白浪燦星」、みなさん読めないと思うが僕も読めない。
流白浪燦星と書いて「るぱんさんせい」と読む。「白浪」は歌舞伎などでは「盗賊」を指す言葉で、「白浪五人男(しらなみごにんおとこ)」という盗賊の演目から、「白浪」が使われている。
流れる盗賊「流白浪」をルパンと読ませるのも文脈があると。「都鳥流白浪(みやこどり ながれのしらなみ)」という演目もある、らしい。
家族の所属する団体で、演劇を半額で斡旋してくれるという有り難い催しがあり、今年のそれが南座の歌舞伎鑑賞だったというわけだ。というわけで、生まれて初めて生で歌舞伎を見たのだ。初めて見た歌舞伎がルパンでいいのか?という疑問もあるが、そうなってしまったものは仕方ない。



そもそも歌舞伎に限らず演劇鑑賞というものをあまり嗜んでこなかったわけで、歌舞伎鑑賞に対してそれなりにハードルを感じていたのだが、なぜか高校生の頃から浮世絵には感心があり、知識としての歌舞伎演目知識が多少あって、いつかは見に行きたいと思っていたので良いタイミングであった。
演目と配役は以下の通りである。公式サイトから引用させていただく。
流白浪燦星|南座|歌舞伎美人
- 流白浪燦星(ルパン三世)
- 片岡 愛之助
- 石川五右衛門(石川五ェ門)
- 尾上 右近
- 次元大介
- 市川 笑三郎
- 峰不二子
- 市川 笑也
- 銭形刑部(銭形警部)
- 市川 中車
- 傾城糸星実は伊都之大王
- 大谷 廣松
- 長須登美衛門
- 中村 鷹之資
- 見浦の虎蔵
- 市川 青虎
- 唐句麗屋銀座衛門
- 市川 猿弥
- 真柴久吉
- 坂東 彌十郎
特に歌舞伎に詳しくなくても、テレビで見るような有名な役者が沢山出ている。
あらすじも公式サイトから引く。
人気漫画家モンキー・パンチの原作により、これまで漫画、テレビアニメを筆頭にさまざまなメディアミックスで人気を誇る「ルパン三世」シリーズ。令和5(2023)年12月に新橋演舞場で新作歌舞伎として上演され、国内外から大きな評判を得ました。初演から約2年の時を経て、このたび、南座で待望の再演が決定いたしました。
流白浪燦星|南座|歌舞伎美人
時は安土桃山時代。大泥棒・流白浪燦星(ルパン三世)とその仲間の次元大介は、“卑弥呼の金印”という国宝級のお宝を狙っています。金印の封印を解くには雄龍丸と雌龍丸という2本の宝剣が必要で、金印と宝剣がそろった暁には世を統べる力を手にできると伝えられています。しかし雌龍丸は大盗賊として名を轟かせる石川五右衛門(石川五ェ門)の手の中。五右衛門も同じく卑弥呼の金印を狙っていたのでした。流白浪が惚れる峰不二子も何か事情を知る様子。さらに天下をおさめる真柴久吉も金印を探しているようで、流白浪の因縁のライバル・銭形刑部(銭形警部)も流白浪と五右衛門らを追っています。一つのお宝を巡る争いの結末は……
なるほど、単に現代のアニメを歌舞伎化したわけではなく、「石川五右衛門」という安土桃山時代の大泥棒を軸に、現代劇のルパン三世を歌舞伎の演目として再現しているのだなとわかる。
なるほど確かに「南禅寺山門の場」を模した場面で五右衛門の「絶景かな」で始まり、ルパン三世の世界と歌舞伎をうまく結びつけていてよかった。これ以外にも古典芸能としての歌舞伎を楽しんでもらうための引用が「だんまり」「白浪五人男」などなど、たくさん用意されていて、それらはイヤホンガイドを使って副音声を聴くことで演劇を楽しみながら歌舞伎豆知識も手に入り、イヤホンガイド800円安い!となった。おすすめです。
片岡愛之助さんや市川中車さんといった、テレビでもよく見る演者さんだが、アニメ版ルパンにぐっと寄せている演技が端々にあり、観客を楽しませようという気迫を感じた。BGMも和楽器でルパン三世のテーマ曲を幾つも再現していて素晴らしかった。「ルパン三世のテーマ’78」「銭形マーチ」「ラブ・スコール」といった劇伴が歌舞伎に再現されているのは往年のアニメファンとしても楽しめた。
歌舞伎って型にはまったものという先入観があったが、市川中車(香川照之)さん演じる銭形はなぜか昆虫が大好きというネタがあったり、演者さんが客席通路を走り回るファンサがあったり、本物の水を使った演出があったり、客席いじりがあったり、と、そんな先入観をぶち壊す、エンターテイメントが追求された舞台で大変楽しめたし、自分の偏見を恥じるばかりである。
先程書いたイヤホンガイドも大変よく、進行を阻害するほどではなく要所要所で的確に豆知識を教えてくれて、単に芝居を見るより何倍も楽しめた気がする。
せっかく京都に住んでいるので、また南座に行きたい。次は古典歌舞伎の演目を(イヤホンガイド付きで)楽しもうと思う。
onishiアドベントカレンダー11日目でした!
